「最高のおもてなし」とは?vol.4—マーケティング思考で考えるおもてなし
- 権名津 琢磨
- 2月18日
- 読了時間: 5分
更新日:2月24日
「おもてなし」は日本が誇る文化のひとつです。旅館やレストラン、ホテル、そして日常の人間関係においても、「相手を思いやる心」が重視されてきました。
しかし、近年の人手不足や働き方改革の流れの中で、従来のような一律の手厚いサービスを維持するのが難しくなっています。限られたリソースで高い満足度を生み出すためには、従来の「画一的なおもてなし」から、「一人ひとりに最適なおもてなし」へと考え方をシフトさせる必要があります。
そのために欠かせないのが、マーケティング思考を取り入れたホスピタリティです。顧客のニーズを的確に把握し、必要なサービスを最適な形で提供することで、効率的かつパーソナライズされたおもてなしが実現できます。
人手不足時代に求められるおもてなしの変化
従来のおもてなしは、「すべてのお客様に最高のサービスを提供すること」を目指していました。しかし、この方法には課題があります。
1. リソースの限界
• 人手不足が深刻化し、一人ひとりに対して従来のような手厚いサービスを提供し続けるのが困難になっている。
• サービス業における労働負担が増大し、従業員の疲弊が問題視されている。
2. 価値観の多様化
• すべての顧客が同じおもてなしを求めているわけではない。
• 「手厚いサービスを受けたい人」もいれば、「必要最低限の対応で十分な人」もいる。
• 画一的なサービスでは、一部の顧客にとっては「過剰」になり、逆に「不足」になるケースも生じる。
3. 効率的なサービス提供の必要性
• デジタル技術の発展により、顧客自身がセルフサービスを望む場面も増えている。
• 「すべての顧客に同じ対応をする」のではなく、「必要な人に、必要な分だけ」対応することが求められている。
マーケティング思考で実現する「最適なおもてなし」
これからの時代に必要なのは、マーケティング思考を取り入れたおもてなしの形です。マーケティングでは、ターゲットのニーズを把握し、それに最適なサービスを提供することが重要視されます。ホスピタリティ業界でも同じ考え方が求められます。
では、具体的にどのようなアプローチが考えられるでしょうか?
1. 顧客のニーズを的確に把握する
すべての人に同じサービスを提供するのではなく、「どんな人が」「どんなサービスを求めているのか」を分析することが重要です。
• データ活用: 予約時の希望や過去の利用履歴をもとに、顧客ごとに適したサービスを提供。
• アンケートやフィードバックの活用: どのような接客が好まれるのか、定期的に顧客の声を収集する。
• スタッフの観察力向上: 顧客の行動や表情から、必要なサポートのレベルを見極める。
2. サービスの選択肢を用意する
「すべての顧客に同じおもてなし」ではなく、「顧客が選べるおもてなし」へと移行することで、満足度を向上させることができます。
例えば、
• セルフサービスとフルサービスの併用
• ホテルのチェックインを「対面対応」または「セルフチェックイン機」から選べるようにする。
• レストランで、スタッフのおすすめを受けるか、タブレットで注文するかを選択できるようにする。
• コミュニケーションの選択肢
• スタッフと積極的に会話をしたい人向けに「対話重視の接客モード」を用意し、一方で静かに食事を楽しみたい人には「必要最低限の接客モード」を選べるようにする。
3. デジタル技術を活用する
人手不足の状況でも高品質なサービスを提供するために、デジタル技術を積極的に取り入れることが重要です。
• AIチャットボットを活用し、簡単な問い合わせ対応を自動化する。
• スマホアプリで、宿泊施設のルームサービスや追加オーダーを手軽に依頼できるようにする。
• IoT技術を活用し、客室の環境を自動で調整(照明、空調、BGMなど)することで、より快適な空間を提供。
4. 限られたリソースを効果的に活用する
すべての顧客に同じ労力をかけるのではなく、「特に満足度を高めるべきポイント」を見極め、そこに重点的にリソースを配分することが重要です。
例えば、
• リピーター向けの特別サービスを強化し、継続的な関係を築く。
• 滞在時間の長い顧客に対して、よりパーソナライズされたサービスを提供することで、顧客ロイヤルティを向上させる。
• 繁忙期と閑散期でサービスの提供方法を変えることで、無理なく高品質な対応を維持する。
「一人ひとりに最適なおもてなし」へ
これからのおもてなしは、「すべての人に同じサービスを提供する」のではなく、「一人ひとりのニーズに合わせた柔軟な対応」を目指すべきです。
そのためには、
• 顧客のニーズを正確に把握すること
• サービスの選択肢を広げること
• デジタル技術を活用し、効率的に対応すること
• 限られたリソースを適切に配分すること
これらのアプローチを取り入れることで、人手不足の中でも高い満足度を実現する、新しいホスピタリティの形が生まれるでしょう。
おもてなしの本質は、「相手を思いやること」。その形は時代とともに変化していきます。これからのホスピタリティをどう進化させるか——今こそ、考えるべき時ではないでしょうか。
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